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原薬連続生産技術開発の展望 ~ファーミラから見えてきたこと~

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原薬連続生産技術開発の展望  ~ファーミラから見えてきたこと~

2023年も早くも1箇月が過ぎようとしておりますが、皆様におかれましては如何お過ごしでしょうか。

本年もNews Letterご登録の皆様にとりまして、素晴らしい一年となりますようお祈り申し上げますとともに、お客様のニーズに応え、満足いただける受託サービスがご提供できるように邁進して参ります。

さて、弊社Pharmira(ファーミラ)が2022年4月より事業を開始し、早いもので10か月が経ちました。前回のNews Letterでご紹介した開発新棟につきましては、世界規模の半導体関連の品不足や原材料高騰など影響を受けながらも、ほぼ予定通りに着工することができ、4階建ての基本構造まで完成しています。建設に携わる多くの会社のおかげさまで2023年7月の完工へ向けて順調に進捗しております。

ハード面の建設・施工など設備投資計画を推進する一方で、医薬品原薬・中間体の製造に利用する“連続生産技術”の開発に余念なく取り組み、開発新棟にて新たなお客様からのR&Dや製造受託をお引き受けできるよう準備しているところです。今回のコラムとして、弊社のこれまでの活動の振り返りと、この分野における外部環境およびCDMO事業の展望について弊社の視点で思うことを書いてみたいと思います。

 弊社の事業開始は昨年4月ですが、CDMOとしての会社説明や技術情報ご提供は少し前の1月よりインターフェックスやCPhI、ウェビナーなどで情報発信を開始していました。医薬品関連企業だけでなく様々なものづくり企業に興味を持っていただき、たくさんのご意見、ときには厳しいご指摘も受けながら、「それを解決するための技術とは何か?」を模索しながら技術開発計画を常に見直し、経営資源の再配分を行っております。

 石油化学製品をはじめとする工業製品を安価で大量に生産するために連続生産を導入することに対して、医薬品においては、厳格に規定された品質のコントロールや管理戦略の難しさ、バッチ製造でも収益性が確保できる経済性などから、積極的な投資や人的リソースの投下の判断ができない、または様子を見ている状況が続いていたと示唆されます。日本国内において、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による連続生産技術を用いた製造承認の実績は製剤工程において6品目、原薬工程については1品目のみで医薬品市場において有意なシェアとは言えない状況ではありますが、逆にとらえると伸びしろが大きく、弊社ではCDMOビジネスチャンスがそこにあると信じて設備投資と技術開発を積極的に推進しています。


 原薬の連続生産の技術開発においては、固形剤などの製剤化工程に比べ、多種多様な反応をつないで合成するフロー反応などの装置開発、cGMP製造に適用できる反応・晶析モジュールや高度なインライン分析・モニタリング技術確立が求められ、難易度が高く現状でも挑戦的な分野であると認識しています。

原薬・中間体の製造工程において、弊社が注力している反応と晶析について考えますと、反応工程ではフロー化技術を軸として、チューブ、カラムなどの多様な反応器を接続し、さらに反応終点のIR、NIR、HPLCなど用いたin-situ分析モニタリング技術開発も実用化に至るレベルまで進んできており、商用生産への実装も近い将来実現すると考えられます。皆様ご存知のように、フロー合成そのものは1980年代以前よりマイクロリアクターなど研究・技術開発は企業やアカデミアなどで広くテーマとして実行され、多くの基盤技術が創出されてきました。製薬企業や同業のCDMO企業とお話すると、以前フロー合成を行っていた研究員の人材価値が高まり、研究方針の変化、新規技術開拓支援を推進する企業も増加しているようで、原薬連続生産においても技術獲得へ向けて組織化やタスクフォースなどを形成して連続生産技術関連の投資優先順位を上げる動きがあることを実感しました。


次に化合物を取り出す肝となる晶析工程において、弊社ではCSTR晶析法以外にテイラー渦流を利用した連続晶析法をコア技術として開発中であり、微細結晶を安定した品質で連続的に晶析させる技術を2023年内に確立して、お客様の連続晶析に関する高いご関心に応えられるよう注力いたします。医薬品の連続晶析はグローバルでみてもまだ製造承認の実例は筆者個人的に確認できておりませんが、欧米中では商用化可能と思われる晶析技術の開発事例が学会や論文などでも発表されてきており、商用実用化へ向けて着実に前進していると認識しています。


 最後になりますが、前述のように医薬品原薬への連続生産技術の商用化実現には、各工程、操作における品質管理、制御など薬事規制の課題を解決しなければCDMO市場の拡大=バッチ生産から連続生産への革新的イノベーションは起こりにくいと考えています。昨年11月にStep4が合意されたICH Q13についてもこれから日本国内規制への取入れ(Step5)が進み、フロー合成や一部の操作の連続化を導入したハイブリッドな製造も最初は静かに増加しているのではないかと推察しますが、水面下で技術開発や設備投資を進められたCDMO企業が一気に市場を切り拓くこともイメージできるのではないでしょうか。弊社のような小さな会社の技術開発だけではリソースもスピードも十分ではないため、多くの関連企業様とのパートナリングや連携により、汎用性の高いフル連続生産技術プラットフォームを構築し、バッチ製法よりも経済的かつ効率的に、環境にも優しい製造法で、医薬品を迅速に患者様へお届けできるCDMOとして、皆様とともに社会貢献できるよう尽力して参ります。

                                                                                                                                                              Pharmira株式会社

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